通り道/石川和広
兆し
まだ何のためか
なんであるか
わからないまま
僕は
昼間泳いでいる
つかんだ波
はなさないために
好きでいられるように
とつとつと
祈る
笑うひと
奪う波
死にゆく影
つかまえようとして
あぶくだけ浮かんだ
空
空
から
さしこむ
短いひかり
僕は泳ぐ
危ない目に
会いたくない
と
身を固くとざしている
開かれた水面に
ありがとうが
なんで言えないんだろう
何度もつまずいて
水の抵抗をつかまえて
わがままと
つぶやく声
危なくなりつつある通り道
こんなことで
世の中の溝を
こえられるだろうか
あせらずに
みんな泳ぐかな
僕は泳ぎつづけられるかな。
戻る 編 削 Point(9)