母からの手紙/ポン太
 
母。中学生の母。高校生の母。病弱だった母の、長い長い入院生活の写真。父との結婚式の写真。姉が赤ちゃんだった頃の写真。私が赤ちゃんだった頃の写真。
 祖母は、一つ一つ丁寧に説明してくれる。
「それは、カヨちゃんだよぉ。」
と言って、私の写真を指差す。目は相当悪いはずなのに、確実に言い当てる。他の写真も全部そうだった。
 「全部、憶えているんだ・・・。」と気付いたのは、もうアルバムを見終わるころだった。
 よく見えていないのに、シルエットで憶えている。それほどまでに、何度も何度も繰り返しこのアルバムを、祖母は見ているのだろうか?それほどまでに、このアルバムの中の人たちを、愛しているのだろうか?
 私は、ただただ人間の持つ力に、衝撃を受けていた。

 「明日、家へ帰ろう!」と決めたのは、その晩布団に入ってからだった。
 彼はもういないという事実を、何故だか少しだけ受け入れられたような気がする。
 私もいつか、子どもを産もう。
 そう思いながら、私は二ヶ月ぶりに、ぐっすりと眠った。




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