エスパー/プテラノドン
 
深夜営業のレストラン。男は、ぼそぼそ声で
「ひじをついちゃいけないよ」と、女に言った。
彼女はコップに口をつけては目をそらし、
隣のテーブルに座っていた大男の足を
しげしげと見つめている。
30cmはありそうね、などと推理を始める。
男はナプキンを床に落として、彼女の気をひこうとしたが
彼女は大男の足と、自分の足を見比べたりするだけで
肘はぴくりともしない。
彼女の頭の中に―、動かない 彼女の肘の中に
もしも 「僕への愛」が あったなら と、男は思っている。
すると、彼女の肘がすっと動く。偶然かもしれない。
少なくとも、男は店を出るまで肘を動かさなかった。
もちろん、そんな些細なことに彼女は気にも止めない。
何たって、あの大男の足は30cm以上もあったのだから。
何たって、あなたの愛は30年以上続くのだから、と。

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