標識/岡村明子
手を離した
信号が
変わる
街が
歩き出す
でたらめに歩いていた
私の足は
生きるということを
決めかねていたのだ
何がどこにあるか
わかるということ
自分の位置を測るということ
どこに向かって歩けばいいかということ
黙って
手招きをするあなたの
影が長く後ろに伸びる
たぶん
いつまでもちんぷんかんぷんな
問答を繰りかえす私は
自分の地図から抜け出すことができない
いつか
あなたは見かねて
赤鉛筆で矢印を書いてくれる
私の標識になってくださいますか
と
今度はお願いして
もう一度
手をつなぐ
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