パチンコ/純太
店はまばらな客入りで
台から流れる音楽も
街から離れゆきながら
奏でる憂鬱のチンドン屋の調
座る台は
どこでもいいのさ
ランドセルが重い頃
晴れた土曜の昼下がり
見上げた我が家のベランダに
いつものように干されていた
親父のアンダーシャツは
俺の唯一のフラッグだった
真面目な親父に定年がきた
ありきたりの夢をあきらめ
絵空事の浮気を語り
飲めない酒をたまに飲み
古い俳優の真似をして
稼ぎを渡す様はピエロのようだが
遅刻はしないでいたようだ
親父ありがとう
俺の眼前で
数えられるほどの銀玉が
台のサイケな灯を反射させ
弾けながら落ちてゆく
雫を落とすような事ではないが
親父が嫌いなパチンコ台に座り
俺は自分の悲しい顔を
ガラスに映してみたかった
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