ヒーロー/和泉 誠
忍者は何だってできる
呪文を唱えれば たちまち火柱や水柱がでてくる
雷だって出せるんだ
忍者の足はとっても速くて誰にも追いつけない
忍者は無敵なんだ
「お前は やられ役な」
嫌だ！忍者がいい！
「お前が忍者？チビのくせに」
忍者がいい！
「お前より マサトの方が足が速いし
ケンちゃんの方が年上なんだぞ？」
「ねぇ 一緒にやられ役をやろうよ」
嫌だ！忍者じゃなきゃやらない！
「お前 生意気だぞ」
僕の体が少しだけ宙に浮いた
つかまれた服が 破けるんじゃないかって怖かった
忍者は無敵なんだ！
どんな奴にも絶対負けないんだ！
僕は叫んだ
ありったけの力をゲンコツに込めて
忍者は絶対負けないんだ
こんなの忍者じゃない
忍者は無敵なんだ
こんなの ニセモノだ
「泣いていたら いつまでたっても
本物の忍者にはなれないぞ？」
驚いて顔をあげる
そこには背の高い男の人
ひらひらした黒い服に手裏剣
忍者だ！本物の忍者だ！
忍者はその手をかまえると
煙と一緒に消えていった
[ｸﾞﾙｰﾌﾟ]
戻る 編 削 Point(1)