Aurora/
 
声を出してはいけない、喉が貼り付きそうになるから
何本もの針が、くまなく全身を突き刺しているかのようだ
指先が麻痺してきた、足を棒にするという諺は
この国にこそ、ピッタリなのかもしれない
ソリの底に身を潜めながら、鞭の響きに耳を傾けていた


案内人のハッキネンさんが、白く整った髭から言葉を漏らす
ごらん、天使の囁きだ。
凍った睫毛を持ち上げた先、瞬きが手の届きそうな位置に浮かぶ
煌びやかに明滅する星々の結晶は、木々の隙間から空を目指す
上体を起こすと、地平の先から にわかに湖畔が迫って来る


森を抜け出た先、拒むかのように吹き荒んだ空も、鳴りを静めて
時すでに夜半
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