お人形/和泉 誠
 
誰かに遊ぶために作られ 飽きられて捨てられ
それが彼女に用意された運命

みんなから忘れ去られた彼女は
薄暗い物置にガラクタと一緒に押し込められていた

ある日 僕は彼女を見つける
埃をはらい かわいらしいお洋服を着せ 踊るように命じた

優雅に生き生きと踊りだした
僕は彼女の悲しい踊りを黙って眺めていた

「外へ行こうよ 外には素晴らしいものがたくさんあるよ
透き通った空気に 小川のせせらぎ 木々のざわめき
燃えるような夕日に 淡く沈んだ湖」

僕はそう言って 彼女に手を差し出した
ためらうことなく 彼女は僕の手をつかんだ

「まずは君を友達に紹介するよ
そして君の素敵な踊りを見てもらおう
それから…」

突然 鋭い光が二人を突き刺す
腐った臭い けたたましい騒音
開かれたドアから 流れ込んでくる

その瞬間 彼女の体に無数のひびが入った
かわいらしい顔 清い体 そして僕とつないだ小さな手にまで

「どうして?」

彼女は粉々に砕け散った ただ僕をその場に残して
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