遠い国の歌/遊羽
夜が泣いている時
その言葉は
口にしないで
空に星がない時
無理に上を向いて
その歌を歌わないで
海に船が見えない時
そんなに遠くへ
思いを馳せないで
そのレコードを聴いている時
そんなにたくさん
ため息はつかないで
あの国から来た兵士は
そろそろ外套を探して
この街を出て行こうとしている
星がきれいな時
そんなに理屈っぽく
話さないで
高速道路に車が少ない時
ラジオから聞こえる
メロディを口ずさまないで
故郷を思い出すまで
どうかその歌だけは
歌わないで
遠い国へと流れ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(2)