沈丁花/和泉 誠
列車の時間がせまっても
気にとめようともしなかった
はかなげに咲いた沈丁花
まぶしい夕日に照らされて
風になびく その花びら
とても愛しくて
遠くで汽笛が聞こえても
気にとめようともしなかった
おそるおそる手を伸ばした
そして分かったのは
別れが僕らを待っていること
人は駅へと急ぐ
たたずむことしかできなかった
別れがどんなに辛くても
どんなに嫌だと叫んでも
どうすることもできなくて
あの列車の行く先は?
この気持ちはどうすれば?
息を切らして走る少年は泣いていた
日はまだ沈まない
きっと間に合う
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