流れ星/和泉 誠
 
彼女は泣いていた 誰も知らない森の中で
夜は深まり 吐く息も白くなる 遠くで獣の声がする
もう長くはここにいられない

流れ星が一つ その足を止める
「どうしたの?何があったか話してごらん」
美しい炎を身にまとった彼はその手を差し出す

にぎれなかった とても怖かったから
彼は微笑み 歌を唄った
燃える太陽の歌 美しい月の歌 光り輝く星々の歌

目をつぶっていれば気が付かなかった
彼の炎が小さくなっていくこと

流れ星は誰にも捕まえることができない
その美しい炎をまとうが故に
遂には炎に焼かれ 彼らは永遠となる

しっかりと握り締めていたその手をほどく
少し驚いた顔 そして悲しい顔
我慢できずに飛びついたその手は前より冷たかった

彼は微笑み 歌を唄う
すべてを照らす光の歌 そこから生まれる影の歌
その真ん中に立つ二人の歌

目をつぶっていれば気が付かなかった
彼がちらりと空を見上げたこと

夜空にはたくさんの流れ星
そのどれもが美しく輝き そして消えていく
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