indeference/安部行人
ある朝、
よく晴れた寒い朝、
私は駅に降り立った、
はるか東から、夜行列車に乗って
この街にたどり着いた
私は探していた、
かつて置き去りにしたものを、
もう何年も前から見ていないものを、
私は探していた
広場には人々が行き交い、
空は冷たく晴れていた、
軽やかな靴音、話し声、
水のない噴水から、
鳥たちが飛び立っていった
ああ、私が探していたものは、
確かにこの街にあったはず、
けれども誰もその名を知らず、
見た者もなく、
私は橋の上にたたずみ、
時は流れるばかり
空には雲が流れ、
秋の午後を彩る、
石畳に靴音がこだまし、
私の求めるものはどこにもなく、
時は流れるばかり。
#2005年11月27日、アコーディオン演奏とのコラボレーションにて、同名のミュゼットに合わせて朗読したテキスト。
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