郵便配達人、走る/角田寿星
 
銃弾と加速す
るヤツと。マッハをこえて銃弾を追い越して月面を七周半して八
の字マユゲで走る郵便配達人。

軍がとうとう爆薬をつかった。ふっとばされる過激派ふっとばさ
れるヤツ。エアロックは素早く閉じて月面に投げ出される寸前の
過激派の首領Gをヤツはいささか頼りなく腕をくるくる巻き込む
ように救けだして息も絶え絶えに手紙を渡す。「郵便でーす」

手紙はおっかさんからのものだったらしい。
興奮しっぱなしの俺たちの下世話な噂ばなしにヤツはうつむいて
目をこすった。
「ふうん」

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