千里眼/仲本いすら
彼女の眼は もうどこか遠いところを
覘いているようで
あからさまに
目の前で
道化を演じてみても
くすり、
とも 笑いません
時折、彼女は
「カルロス、もうお別れの時間ね」と
口から漏らしますが
その言葉は
口から漏れるたびに
どろり、
と 優しい色のゲル状に
変わっていくんです
そのゲル状を
拭うのは、僕です
彼女の眼は もうどこか遠いところを
覘いているようで
あからさまに
目の前で
銃口を押し付けても
ぴくり、
とも 動かずに
「今頃カルロスは、インダスのほとりかしら」と
まるで
僕など見えてないかのように
引き金を引いた瞬間に
彼女は
優しい色のゲル状になり
僕の眼は
彼女の見ていた方向に
また、
引き金を引いた
空は優しい色を、していた。
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