王国/アンテ
人きりで言葉の旅に出た
言葉の国境をめざして進んでいくと
言葉の坂道はだんだん険しくなり
ついには言葉の崖で行きづまった
言葉の王国を振り返ると
さまざまな言葉が
所せましと広がっていた
言葉の崖から言葉の身体を乗り出してみると
言葉ではない本当の暗闇が広がっていた
持ってきた言葉のロープをのばして
言葉の斜面をつたって降りていくと
やがてなにも見えなくなって
言葉の手足の感覚もなくなった
言葉のロープを放して
暗闇に浮かんでいると
言葉の身体がすこしずつほどけて
無数の言葉があたりにただよいはじめた
言葉の心の塊だけが
壊れることなく最後まで残り
光を放ちな
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