冬に生まれた夏へ/英水
 
遠い冬に生まれた夏が、またこの冬に巡る
僕はあなたの手にそっと触れ、

けれど
僕はあなたに触れることができたのだろうか

夏が 自ずからの素晴らしさに耐え切れず
崩れてゆく幾つもの午後

幾つもの蝉が 泡のように生まれ
夏の声を 拡声し 鎮め
崩れて行く夏とともに 地表へと帰ってゆく

そのためだけの器官

 昨日の返事に耳を澄ますと、後悔が生まれてきます
 それを忘れるために 耳をほおり投げました 
 土星の輪の中に身を潜めていることを願う

いったい
夏は、全て通り過ぎるものなのだろうか

あなたに触れる

 そのためだけに 
 僕は巡るだけの
 蝉になりたい

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