形見/
こしごえ
得た と思うと同時に失う
林檎の皮を剥いていく
螺旋が皿に垂れていく
果物ナイフに映る甘いかおりに
私は涙を告げる
何も動揺することはない
唇はかすかに震えているが
芯は蜜を湛えて
黄金色の時を流れてきたのだ
しゃりしゃりと噛み砕く細胞の
終着点は私だったろうか
止まらない
意識のゆらぎのなかで生れ合せた
私は
いつまでも円を咀嚼し続ける点
林檎はしれっと
皮と
芯に眠る種をのこした
育てよう
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