クリオネ/銀猫
 
どことなくストレス加減の昼休み
冷たい珈琲に浮かんだ氷を
ストローの先でつついたら
猫みみのかたちの小さな生きものが
ちょこりと顔を出した


頭痛の道連れに
こんな小粋な錯覚が訪れるはずもなく
空いた皿に目をやって
疑問符つきの息をひとつ
次の煙草で狼煙を上げて
平常心とか
落ち着きとかの心理を掻き集め

も一度 、しゃららん

茶色の海をかき乱すと
猫みみの生きものに
赤い心臓と
天使の真似事のような二枚の羽根を発見した

海水を吸い上げ
正体を見てやろう
乾いていない喉に
流氷は鋭すぎるのだけれど

水の中でしか呼吸できない猫みみは
気配を察して亜空間に逃げ込んだらしい


昼時を過ぎた街なか
溜め息で揺れた小枝に
赤い風船が引っかかっていた






  ※「クリオネ」に関するご参考として。
    http://www.mon-cci.or.jp/kurione/kurione.html






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