クリオネ/銀猫
どことなくストレス加減の昼休み
冷たい珈琲に浮かんだ氷を
ストローの先でつついたら
猫みみのかたちの小さな生きものが
ちょこりと顔を出した
頭痛の道連れに
こんな小粋な錯覚が訪れるはずもなく
空いた皿に目をやって
疑問符つきの息をひとつ
次の煙草で狼煙を上げて
平常心とか
落ち着きとかの心理を掻き集め
も一度 、しゃららん
茶色の海をかき乱すと
猫みみの生きものに
赤い心臓と
天使の真似事のような二枚の羽根を発見した
海水を吸い上げ
正体を見てやろう
乾いていない喉に
流氷は鋭すぎるのだけれど
水の中でしか呼吸できない猫みみは
気配を察して亜空間に逃げ込んだらしい
昼時を過ぎた街なか
溜め息で揺れた小枝に
赤い風船が引っかかっていた
※「クリオネ」に関するご参考として。
http://www.mon-cci.or.jp/kurione/kurione.html
戻る 編 削 Point(16)