暖炉/岡村明子
 
寒さが染みてきて
壁から伝ってくる


暖房を酷使しても
革のソファは冷たくて
ふたり絡まりあっていても
耳に吹きかける息が白くにごる


かつて
部屋の中で燃えていた
暖炉を壁に塗りこめて
見つめるものを失くしてしまってから
部屋は入口と出口だけになってしまった
世界を取り巻く大きな風から私を守るか
大きな背中よ
ふいごとなって再び灯すか
体に塗りこめられた
ふたつの


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