『Lyrical-chips』/川村 透
 
ダッシュボードに置かれた
紙コップ入りのハ―ブ・ティ―
香ばしい湯気がフロントガラスを照らし
ホログラムの金魚のように泳ぎ出す


 「ミントのカナシミ」


透明な犬が、僕の見えない手のひらをなめる
僕は君にとって、どんな甘露、なんだろうか
あまずっぱいジェルを頬にすり込んで
君は僕を扇型に開こうとしている


 「祈りを薄荷のようにくゆらせて歩け」


君は僕に似た名前のない馬にのしかかる
脳の中まで、うす蒼く、満たされたまま
ラフカットジュエル、ラベンダー・ジェル
僕たちは薔薇色の血を流しながら薄目を明ける


 「メイプルシロップ、な朝、傷口
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