「手のひらで風呑む人」/shu
 
青い空

空と大地の狭間に風が舞い
生まれた言葉たちが
透き通った身体で浮遊する
指の先で感情と水蒸気のバランスを測り
言葉の記録簿に記していく

黒い雲

心の急激な気圧変化に
過去の質量が膨張し停滞する
感情は無軌道に交錯し
ハドロン状の暗雲を形成する
言葉たちはもはや純度を失い
次々と落下していく

暗雲の下で凝固した言葉を拾い集め
地面に突き刺さり凍結した
感情の骸なぞに寄り添うて
自分の空を見失い蹲る人よ

おまえの流した涙の音を
おれはいつも数えている
涙は冷たい空気に晒された
暖かい心との温度差によって
滲み出る雫
それに名前なぞ
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