遠心/英水
 
嘘つきの午後に いる僕たち
嘘つきの夜も落ちてきて 建物は暗がりに隠れたつもりの輪郭です
そこの建物を一枚めくると フラミンゴがうたた寝し
ピンクは 建物の稜線からしたたり落ちるのですか

そんな瞬間に 僕と君は大声で発生します
たとえばそれは 
コップの切先に君が残した口紅
そしてくしゃみをして ずずっと花をすする 
僕は そんな瞬間に君を遠心します

僕と君とは大声で発生します
のぼせ上がった上昇気流に乗って 
次から次へと発生し続けると
明日の裏側までいけるのでしょうか
と、 うかれちまった悲しみを 僕は遠心します

ああ、
今日はついていない一日だったの
なんて
白い蒸気をふかしながら呟く君は 
昨日へのトラベルへと
出かけてしまったのでしょうか
僕はその仕返しに 君を遠心します

嘘つきの午後も いつかはきっと大声で発生します
その瞬間まで僕は
君の手を離さないつもりです

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