シリウス/蒸発王
シリウスが綺麗になったから
息子と一緒に
夜の海へ出かけた
星の匂いが鼻をつく
息子の手には
骨董レベルの携帯が握られていて
それは
息子の母親の持ち物だった
折り畳みじゃない
のっぺりとした形が
最近『オレ』と言い始めた
8歳の息子の好みだったらしく
気がつくと何時も持っている
そういえば
息子が生まれる前
よく妻とこうして星を見に来た
寒がりのくせに
いっとう好きな星は
シリウスで
8光年かかって
眼球に飛び込む周波音を
静かに味わっていた
8年前
2人で見た時
出発したあの周波音が
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