出かけなかったんだ/石川和広
 
いられなくなる
電信柱を飛びこして
君にあてた手紙は何通目だろう
全部朝のにおいがする
君の手紙は4通目です
新聞読んでたら
大切なことなんだけど
もう世の中があるみたいで
正しすぎてまぶしい

ぼくらは抱きしめあい
守りあわなければならない
正しさから
美しいシナプスの放射の銀河を
少しかさついた白い君の手のひらを
そして 耳かきを
にせものにつままれない
この肉眼を

眼から砂がこぼれおちて
画面を見ていると
涙があふれてきて
そのとき悲しくなくて
うれしくもなくて
眼の疲れだけかもしれなくて
でも それはお知らせで
体を大切にして
何だかお知らせで
予言で
愛しあいたくて
うまくいかなくて
そもそも届いてないかもしれなくて
君のことを考える


今日出かけなかった
君のこと考える
そして新聞がつかまれる
廃墟で

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