半生記/炭本 樹宏
 
眠れず苦しかった
 その尼さんのなまえは純さんといった
 淳さんは僕に日本の文化にスポイルされたのねと言った
 病気のことを関係なしにお寺の手伝いをさせられた
 アメリカに日本式のお寺があるのがめずらしかったのか
 ひっきりなしにアメリカ人は訪ねてきた
 ぼくは逃げるようにして過ごした
 淳さんは薬なんか飲むのはやめなさいと言った
 それで僕は飲むのを止めたが一週間ぐらい副作用でげぼげぼ吐いた
 慣れてくると楽しい仕事も見つかった
 その郊外にあるお寺では五右衛門風呂を使っていた
 薪を燃やして風呂を沸かすのだ
 その火をくべるのが僕のお気に入りの仕事だった
 小さな火が
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