【批評ギルド】『叫びと沈黙』 安部行人/Monk
 

来みたいなところだ。お話として聞かされる分にはそれくらい冷静
に処理される。

作者の気持ちとしてはふとそういう叫びと沈黙の同一性を身に感じ
て記した作品なのかもしれない。ただそのふと身に感じたものが文
章を介して読者に伝わることはなかなか困難なことだ。少なくとも
「なぜならば」という説明では知ることはできても、同じように身
に感じることはできない。「叫びと沈黙」という作品は説明の域を
出ていないと思う。どうすればもっと感じさせることが出来るかと
いうといくつか方法があるのかもしれないが、読者を話中に引き込
むのが手早い。作者がふと身に感じた状況と仮想的にでも同じ立場
に読者を置くことだ。そのためには、それなりのお膳立てと作品と
しての魅力が要る。ひきこむためのものが。
詩でそれをやってほしい。散文詩を書けということではなく、むし
ろ散文以外でやってほしい。


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