夏風邪のカルピスウォーター/野島せりか
 
ように一気に飲み干す
寝疲れた体の温度を下げるようにしみ込んだ

子供の頃の夏風邪
苦い薬のあとのカルピスウォーター

額に汗をかく
頭がかゆい
お風呂に入りたい

そういえば あの頃の私は
カルピスのお風呂に入りたいと思っていた
乳白色の湯船を見るたび
いつも思っていた
入浴剤がお湯に溶けてゆく瞬間は
カルピスをかき混ぜる時とおんなじ気持ち

手遅れになった懐かしさを
今頃手なずけるのも
今だからイイだろう

夕刊がポストにつきささる頃
少しだけ満ち足りた
私の一日が終わる
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