船の中のリングの上/蒼木りん
いまはただ
この一年の仕事が
早く
無事に終わるように祈る日々で
色恋も感性も休んでいる
人生修行は辛いけれど
まだまだ足りない
わたしは
普通の暮らしを択んだのだ
普通であるように努めなければならないのだ
普通の人の暮らしという課題は
ときに
新鮮な驚きもあるが
たいていは
小難しく苦痛なときが多い
余計なお世話でもあり
ありがたくもある
人社会の仕組みはここまで来てしまい
後ろをふりむいてももう
引き返せないのだから
進むしかない
好むとも好まざるとも
あらゆる人々を巻き込んで
この船は
大海原を航行中
わたしは
船は好まない
恐ろしく悲惨な転覆の想像がよぎるから
ましてや
多くの運命を乗せた船の
重い舵取りなど
誰かに擦り付けたい
名誉が欲しけりゃ
あなた
やってみな
普通に怖いことは
有刺鉄線に引っかけて
裂ける皮膚の傷
ここは
ゴングが鳴るまでの
リングの上だったのか
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