雨が好きなの/刑部憲暁
毎日 雨の七月は
すずしくなるのはともかくとして
どことなく 鬱々として
なんだか 人生の遠景みたいです 煙っていますし
そんな気もしてくるんですけれど でも七月だから
庭に道に花は咲き乱れ
アジサイの枯れたように穏やかな色合いや
柔らかなバラの表情 くちなしのコケットな香りとか
見たり嗅いだり 〔くちなしは見ちゃダメですけど〕
ああそれだって 好いこともあるよねって
思えるから ありがたいです
そういう時にまた 道端に
赤いシャープペンシル 落ちてたりするんですよね
雨に打たれて 踏んじゃいそうにもなって
取り上げて つん とノックして
お どうした ってきくと
寝てるの って 〔おいおい!〕
道端に寝てるのは 穏やかじゃないでしょ
ましてや 四・五日降り続いてた わけですから
おかしいでしょ それ
へんなの って言いましたら
雨が好きなの ですって 好い子なんだ
ぼくもさ って言ったら
にっこり 笑いました
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