昔の駄文「詩の人称について」/佐々宝砂
 
そんな単純な図式で理解できるものではなかったのだ。

 「作中の視点」イコール「作者の視点」という意識のもとに書かれた二人称小説は、一人称を省いて書かれた一人称小説に過ぎない。本当のところ、「神の視点」と「作者の視点」は別なものなのだ。二人称で書かれた創作の場合に限らず、「神の視点」を用いて創作するとき、作者の視線は作中の「神の視点」をも上回る大きな視野を持っていなくてはならない。しかし、よく考えてみれば、これは人称がなんであろうとも変わらずに言えることなのだった。一人称で書かれている場合すら「作中の私」イコール「現実の私」ではあり得ず、書き手としての私は「作中の私」を観察し理解し描写しなくて
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