貝殻の道の上で/ベンジャミン
海岸にうちあげられた貝殻は
まるで磨かれたつめのようでした
わたしはその上を裸足になって
割らないように歩きました
もう冬の寒さの中
波しぶきが雪のように舞う日のことです
痛いようなくすぐられているような
砂から顔をのぞかせているようで
砂に半分埋まっているだけの
貝殻の上を歩きました
冷たさが足の裏から伝わってきて
それは忘れられない記憶のように
わたしを淋しくさせました
引き潮に取り残された貝殻が
だんだんと渇いてゆくような喪失感です
感覚がなくなるほどの悲しみを
ゆっくりと思い出していました
やがて陽もすっかり傾いて
何処まで歩
[次のページ]
戻る 編 削 Point(4)