ユダの闇/The Boys On The Rock
 
かりすぎるほどわかっていたが・・・
普段と変わらぬ日々
明るい日差し
気持ちの良い大気と快適な温度
日常というにわか作りの天国のなかで
俺の懐には夢と些少な欲望をかなえる金もある
それなのに
あの方の死も知らぬゼロータイの男にも
気づかれるほどのものだったのか・・・
それは 俺の中にあるのだ
まぶしい視界に見入る暗鬱な視線
あの日から あの方の逝かれた瞬間から
常に感じているこの闇
まるで 太陽に疎まれ
俺のまわりにだけぽっかりと影が差しているようだ
嗚呼!と叫んで道に蹲ると
罵声とともに
棕櫚の葉を摘んだ車を引くうさぎ馬が傍らを通り過ぎた
額に砂をつけたまま 顔を上げると
いつもと変わらない 喧騒たるエルサレム
乳と蜜の流れる赤土の地
だが やはりそうなのだ・・・
この地上の楽園で
俺は一人暗闇の中を歩いている と
気がついた瞬間だった

*ゼロータイ:熱心党、ゼロテ党ともいう。ユダヤ人過激派で、
ローマからの独立を叫ぶ政治結社であり、かつてユダは、同じ
く十二使徒「熱心党のシモン」とともにゼロータイに属していた。

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