『9月11日の線香花火』/川村 透
 
--少女の前に突き出されていた花火のうちのひとつが
ひくひくと火花を痙攣させて果てた
 
藍色の少女には、
次から次へと灯を移し代えられていやいや燃えている花火が
ただのモノクロの火花にしか見えなかった。
蛇のような筒から吐き出される炎の生臭さ
吐き気を催すような匂いと煙が
厭わしくてならないと、
少女は誰かにわかってもらいたかった。
 
それなのに少女は
蛇に魅入られた蛙のように炎から目をそらすことが出来ないでいた。
目の中の硝子玉に白い火花が巻きついて、焼きついていて
脳髄に刻み込まれたいやな残像の痛みを、涙で清めてしまいたいのに。
その、ほの暗い針のしずくは、あ
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