四季/渡邉建志
 
 
あなたのふたえまぶたのまるみを
舟にしてその向こうの海を見た
つめたい静かな水平線は 
しかし
燃えさかる太陽を隠していて
ときにフレアが水平線を越えて叫びを上げた
ああ!
あるいは花のように舞い上がり
雪のように降りかかる
無数の粒子を見た
海底には硬い地盤の上に
悲しい屋根があった
あなたの窓はその上
あなたは首を出して
ちいさな鐘を鳴らした
ちいさな波がひろがり
舟は揺れて揺れて
空が荒れ神は次々と雷を降らした
それでも
あなたの薄い角膜は澄んでいて
ちいさな雫がそのなかを舞い
ちいさな蝶がそのなかを縫っていった
蝶はどこかへ消えた
ついに
激しすぎる太陽が現れ
あなたの薄い角膜が壊された
あなたはまぶたを閉ざし
あなたの髪は宙に舞い上がり
あなたはあなたの海底に
にぶいナイフを
三度振り下ろした
 
 
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