海の家/りぃ
 
空の一滴救い上げ
海に返してみたいのだ

昔海には空が住み
お互いを敬っていたのだと
角の家の老人が話しているのを聞いた

今ではもう
空は太陽に引き寄せられてしまっているし
海は地上の引力から逃れることは出来ない

「かわいそうになぁ」

離れ離れになった哀れな恋人達の話しのように
老人はベッドの上で涙を流した

窓の外の景色が哀れでならなかったのだろう
何せその窓から見えるのは高く舞いあがった空と
地上に縛られた水の海なのだから

空を一滴救い上げ
海へ帰りたいのだ

いつか君が僕をその瞳に映し
心まで飲みこんだあの時みたいに

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