夢感染/蒸発王
私がゲームをしてる間に
貴方は酔っ払って
うたた寝をする
唇から
解き放たれた
吐息まじりの
夢が
狭い部屋に
充満する
窓に
青空とカモメが横切り
レコードの音楽が
♪の形をした
魚になって
部屋中を駆け回る
夢はウミの匂い
私は
白いセーラーで
ゲーム機のコントローラーではなく
舵をきり
寛容植物の幹は育って
マストに
緑の葉が大きな帆になって
風を切っている
デッキに貫かれた
海風は
蒼く
たなびいて
私のうなじを撫でると
ぱらぱらと桔梗に変わり
紫の花弁が肩甲骨から翼をはやして
飛び立つ時
いきなり
壁にぶちあたった
気がつけば
その壁は床で
船のこぎすぎで
前のめりに倒れた自分の姿が
夜で真っ黒な窓ガラスに映っている
背後から
貴方のあくびと
俺どれくらい寝てたの
と言う言葉が聞こえて
やっと
貴方に
夢を感染(うつ)されていた事を知った
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