昨日の今日/むらさき
あたしは女優だとあんたは言うのだった
あんたが起きる3分前ちょっきりにいつも
あたしは目を覚ますのだった
鏡をみてもその二人の姿は映らずに
目を細めてようやく輪郭が見え隠れするぐらいだった
雨の日にはいつも1サイズ小さい指輪が光るのだった
あんたが摘んだ白い花は気持ちよく枯れていき
ちょうど死ぬ一歩手前で気まぐれに水を
与えられるのだった
あんたとあたしは幸福にもみんなより多くの
果実を拾うことができた その果実は甘酸っぱくて
舌のひらひらをくすぐったのだった
あんたが本を読もうというので手当たり次第に
文字をルーペで凝視するのだった その時いつも
脅かされた
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