昔の駄文「他者の発見」/佐々宝砂
 
戦争の話をしたもんだから、私が16歳のとき書いた詩を思い出した。意識的に詩を書きはじめて2作目の詩である。


 「所有者」

あたしはいつだってあたし自身のものだと彼女は思っていた。彼女の思想が通用せぬ時代があったことを学んではいたが、彼女は、それはあくまで彼女とは関係せぬ昔語りであると信じて疑わなかった。そして彼女は、閃光を浴び最期の瞬間を迎えたときでさえも、気付くことがなかった。彼女の生きる時代もまた、過ぎ去ったあの暗い時代と大差ないのだということを。

彼女の膨れ爛れた醜い肉体は、今や誰の所有物でもない。


これを書いた時、世界は冷戦まっただなかだった。19
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