石川和広詩集『野原のデッサン』を読んで/窪ワタル
ないようにと祈っている。
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この詩集は、秋から冬に向かう風のようだと私はおもった。
個々の作品によって、当然、趣が異なるが、そこにあるのは、素朴な暮らしの発見である。発見と云っても、特に取り立てて目新しい何かではなく、極々ありふれた日常の事象や、心情の「再発見」である。
詩人は、ただ、素直にそれを観察し、書き起こしたのだとおもう。日常というのは、そうそう取り立てて心騒ぐような事象に溢れてはいないものである。うっかり暮らしていると、その輪郭さえも薄ぼんやりとして行き、捉えて言葉にすることなど覚束なくなる。
だが、詩人はそうではなかったのだ。それは、意識的にそうしたと
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