ドアを叩いて消える/健
近づいて そしていつも消えて
わかっていながら
誰もいない部屋で待っていた
いつまでも
窓はちゃんとある
カーテンは少し分厚い
少しだけ外の空気が流れてくる
訪ねて来てくれないかと
楽しみにして
誰もいない部屋で待っていた
いつの日も
たまに声を出す 叫ぶ
外の世界に聞こえるように
まだ僕はここにいますよ と
そうすると
聞こえてくる気がする
壁の向こう 足音
更にはノック
慌ててドアを開けると
足音は遠ざかる
外は怖いからすぐに閉める
そして繰り返してきた
幸せとか そういう 漠然とした待ち人
いつだって ドアを叩いて去って行く
入ってきてはくれない
終わらないお話にはしたくないから
今度来てくれたなら
ちょっと
追いかけてみようかと思っている
意味はないかもしれないし
逃げられそうな気はするけれど
今日も
足音が 聞こえるような 聞こえないような
もしかしたら
風の音かもしれない
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