月と音楽/セキラボ!
 



夜、自転車で街を疾走った
団地の上で月がいびつで
僕は口笛を吹いた


本当は聞こえて欲しい


夜風が冷たくなってきた
君の家の灯りが見える
君の部屋
指さき
ひとみ
かみ

ちびる


僕の胸では涙が柔らかい温度で
揺れていた


夕陽のよう


いつも君の後姿をなぞっていた
校舎を抜けた並木道の
そこでは
神様の音楽が吹き溜まっていた
そこを
君だけが通り抜けることが出来る
そんな気がした


僕は自転車をこぐ
精一杯
街を突き抜けようとして
けれどもどこまで行っても街は街で


君の部屋の灯りを脳
[次のページ]
戻る   Point(1)