蝿/むらさき
 
 突然 その蝿に
 死の機会が与えられた

 蝿が期待していたより
 時のひとかけらほど早く

 ほこりまみれの教室を
 最後の舞台に選び

 その無数の目で
 一千個の慈悲深い
 西の太陽を
 
 いとおしむように
 見つめながら

 醜い羽を
 いたわるように
 横たえ

 古墳となった教室で
 充実した蝿の屍は
 光と影の
 境目が見えなくなるまで
 ゆるやかに
 とけていく

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