蝿/
むらさき
突然 その蝿に
死の機会が与えられた
蝿が期待していたより
時のひとかけらほど早く
ほこりまみれの教室を
最後の舞台に選び
その無数の目で
一千個の慈悲深い
西の太陽を
いとおしむように
見つめながら
醜い羽を
いたわるように
横たえ
古墳となった教室で
充実した蝿の屍は
光と影の
境目が見えなくなるまで
ゆるやかに
とけていく
戻る
編
削
Point
(3)