スカイライン/光冨郁也
 
音がしはじめる外の明かりでぼくはコップの中の水を飲む)

 母が退院して、
 引越をした。
 日がさしこむ、床。
 三人の、青空に、
 部屋は、広く、明るくなる。
  
 父と並んで、
 グローブと、ボールをもって、
 キャッチボールをしに行く、
 たてに長い公園。
 一球だけ、父を驚かせた、
 速球の、重い音の響きに、
 わたしはグローブを、
 胸にあてて、笑う。
 ボールを投げ返す、父の手。

 一年後の、折れた春。
 わたしは、ふすまの陰から、書斎を覗く。
 原稿用紙に、
 向かう父は、
 机に万年筆を叩きつけ壊した。
 病室に移る前の、
 部
[次のページ]
戻る   Point(11)