スカイライン/光冨郁也
手で、ずれた眼鏡をあげる、八月の、水をふくむ、曇り空。閉鎖された父の勤務先、N社の自動車工場の脇を通り、母の自動車で、霊園に向かう。いままで納めることのできなかった、父の灰が、眠っている。わたしは、新しい眼鏡をかけて、暑い日の、風が、短く切った髪に、距離を教えてくれる。昔、山口から離れて、転々とし、三人ではじめて来た、神奈川の小さな町、住宅地に変わった、かつての田舎道を走る。
走る。風が、熱い。買ったばかりの半ズボンに、袖なしのシャツが、風にはためく。地平の彼方には、見えないものがある。耳に風が音をたてる。母は目の前の車が遅いと、ハンドルを握りながら、怒っている。わたしは黙って、頬を支える手
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