Linda/なを
 
わたしにゆるされることは手をかさねること
六月の墓地でしゃがみこんで草笛を吹くと
わたしの手はやわらかい土のように
生まれたてのなめらかな手を覆う



(ささやくのはありふれたうたのような)



六月生まれの娘は草むらのあいだの道をあるく
雨は掃射砲のように草をちぎり
娘ははずむ息で低い空を見上げて呼吸がつまる胸をだきしめる
緊密な空気をかたいパンのようにして喰いちぎる
雨もひかりも掃射砲のように
しろいふくらはぎの六月の娘をちぎる



六月の娘はひとり
ひとりであるく
ひとりで長距離バスに乗る
ひとりでパンを食べる
ひとりで生まれる


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