この馬鹿野郎!/あおば
 
みもふたもないはなしである

漱石の夢十夜の第一話
おんなはあっさりと死んで行く
おとこは大きな真珠貝を手にとって
庭に穴を掘り埋葬する
死亡診断書は何処にある
埋葬許可書はもらったか
そんな些細なことが渦巻いて
はなしの中に入れない

百年後に会いに来るというので
男は墓の傍らで待っている
日が昇り日が落ちて月が出て
ゆっくりと回転して
まるでH.G.ウエルズの
タイムマシンのようだ
タイムマシンでは
太陽が真っ赤に膨らんで
大きな蟹がのろのろと這いまわる
なんとも居心地の悪い未来であるが
漱石の
夢十夜の第一話は
百年後なので
軽いというか

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