ネットワーク(不明の出火)/Terry
パリ、ニューヨーク、シカゴ、パパと一緒に。」
ベルが鳴った。パパのお帰りだ。
「おかえりなさい。」
「ただいま。遅くなった。おいしそうな香りがするな。」
「朱音ったら、料理の腕がいいのよ。」
スーツを壁に掛けて壽則(ひさのり)は椅子にかけた。シチューを口にしながら朱音に言う。
「彼氏を紹介してくれないな。インターネットで会話をしてるそうじゃないか。」
「憧れている人がいるの。」
「誰だい?」
「インターネットで使う名前はショパン?世。」
朱音は両親に隠し々々告げた。
「はっはっは。とすると音楽家か。楽器は何を?」
「ピアノ。ピアニストよ、彼は。」
「パパと同じじゃないか。有名なのか?」
「うん。とても。」
もうお嫁さんにする年頃の朱音を、壽則は寂しげな目で見つめた。女性は表情を読みとるのが得意だ。
「パパ、今日のニュース見た?」
朱音は話題を変えた。
「夕刊で見た。朱音、気をつけるんだよ。」
朱音はシチューを手にするが振るえていた。赤く燃え上がる恐怖が脳裏に迫ってくる。
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