白物家電/MOJO
白物家電を自転車の荷台に括りつけて、私は必死にペダルを漕いでいる。
いま思い出してみると、あれは冷蔵庫だったような気がする。あんなにでかいものが自転車の荷台によく括りつけられたものだが、しかしそれはいまになって云えることで、考えても仕方がないことである。
ある街で、私はその冷蔵庫らしきものを打ち振り、人を撲殺した。私はその者の頭部に白物家電を何度も打ちつけ、その者は絶命した。私の心中は憎しみに満ちていて、そうするだけの正当な理由があった。しかしその正当性は私だけのものである。
頭部がへこみ、瞳孔が魚の目のように開かれた死体。傍らに放置された、強く打ちつづけたためにいびつに歪んでしまっ
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