お母さんのモンブラン/ZUZU
レキギターだと知ってがっかりする。
誕生日には山のようなモンブランを作ってくれる。
ぼくが眠れないときはぼくの父さんについてのつくりばなしをしてくれる。
『空想上の人物にしては、
生き生きとした実在感があふれている』という劇評がのった。
その新聞をスクラップして喫茶店の壁に飾ったのは
ぼくのお母さんの昔の恋人だったというマスターだ。
お母さんてどんな人だったの?
とぼくが聞くと、
すくなくともあんな人ではなかったな、とパイプをふかす。
でも…
でも?
おまえのユーモアはなかなかに好もしいものだよ。
きっとお母さんも天国で笑いころげたことだろう。
マスターのモンブランは素晴らしく美味しい。
あんまり美味しいので、めったに食べないことにしている。
今日はつい、食べちゃったけれど。
お母さん。
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