「え」/
 
アンケート用紙にずらっと並んだ
「いいえ」を眺めていたら

「え」が物凄く変なもののように思えた

何だこの曲線は バランスがおかしい
「い」はこんなに整然として綺麗なのに

だんだん「之」に見えてきて
「元」のようにも見えてきて
棒人間に見えてきて
ついには古代文字ではないかと疑ってしまった

何故今までは
このおかしさに気付かず
当たり前のように
受け入れてきたのだろう

だいたいこの口から出るとんでもない音の数々を
ひらがな五十文字足らずで表そうとするのがおかしい
ひょっとしたら
文字なんて物事をややこしくするだけで
人間が生み出した馬鹿馬鹿しい発明の一つなんじゃないだろうか


考えているうちに
何かやたらと疲れて
馬鹿馬鹿しいのはお前だと独りごちて 
リビングでそのまま寝てしまった




目が覚めた後
体の節々が痛かった


親父が笑いながら

馬鹿みたいに足開いて
それは変なバランスで寝てたからな

そう言って同情してくれた

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